先駆者達のメッセージ 九鬼紋七(フルバージョン)

「和心協力」100年企業の系譜 九鬼紋七

三重県四日市市にある「ごま」の総合メーカー、九鬼産業株式会社。現在、会長を務める九鬼紋七氏は130年続く歴史を守りながら、経営理念を再構築し、高品位のごま製品を製造に成功している。
紋七氏の生い立ちから、九鬼家の歴史、そして九鬼産業の「人」に重きを置いた会社経営とは。
(総視聴時間 1:03:27)

【視聴のためのキーワード】
○九鬼産業 ○5S・6S活動 ○TPM活動 ○経営理念 ○社是 ○理念経営 ○ミッション経営 ○ISO9001 ○ISO22000 ○ハラール ○CSR ○コーチング ○EQ ○NVC

【要点と視聴のポイント】
 九鬼紋七氏は、南北朝時代から江戸末期まで活躍した九鬼一族に端を発する、四日市九鬼家の当主であり、現在では「ごま」製品を中心とした総合メーカーである九鬼産業の会長を務めている。
長い歴史を持つ九鬼家の当主として、どのような考え方の下に企業経営に携わってきたのか、またこれからの目標についてインタビューを行った。
九鬼家が九鬼水軍をその祖としていることから、「板子一枚下は地獄」ということわざを挙げ、いかに協力して仕事を進めることが大切かということを、また和を尊び協力して事に向かう姿勢を「和心協力」という言葉で表している。これは九鬼家が地域の人々と協力しながら、四日市の企業として産業を牽引したことや、歴代の九鬼家当主が、地域の発展や公害問題などに積極的に関わってきたことにも起因している。後に挙げるが、社員教育の一環として、地域と連携したゴマの育成も、この考え方に基づくものである。
氏自身からは、その生い立ちの中で、特に家訓などの教育は受けたことがなく、自由な子供時代、学生時代を送ったと語っているが、九鬼家が尊んでいる「和」という考え方は、氏の考え方の中で、大きな意味を有している。
次に氏が、九鬼産業の経営にどのように携わったかについて伺った。
30代前半で常務取締役となった氏は、ISOの導入に尽力している。九鬼産業は先に述べた通り、高品質のゴマ製品を扱う総合メーカーであるが、氏の目には、経営の方法や管理体型など様々な側面が‘家業’であると写った。そのため‘企業’としての体制を整えるため、ISO9001を取得(1999年)している。また一般的に製造業やサービス業などの職場環境の維持改善で用いられるスローガンの5S、6Sなどといった考え方、さらにはTPM活動など、様々な経営手法と考え方を取り入れる努力をしている。
ISO9001については2002年に、2000年版に更新しているが、これ以外のIS0基準の導入を性急に行うことは避けられている。一般的にISOは、その取得を公開することが可能で、企業の品質や経営管理が優れていることをアピールするための手段として取り入れられることが少なくない。また、たとえば生産ラインのみといった、部分的な取得も可能である。しかし九鬼産業では、全社において取得、更新している。
これについて氏は、取得することが目的ではなく、国際的な管理基準を経営基準とすることで、企業の経営の体系を刷新することにあったと語っていることは、特筆すべき点である。
続いて経営理念を策定した経緯と考え方について述べられた。
九鬼産業には、社是として「和心協力」、社訓として「生産を通じて社会に貢献する」という考え方があった。取締役社長に就任した氏は、社訓にある「貢献」という言葉を「奉仕」という言葉に変えている。これは社会への取り組みに対する姿勢と謙虚さをより高めるという意志に基づくものである。IS0の事例についても同様のことが指摘できるが、例えばCSR(企業の社会的責任)という考え方において、特にヨーロッパでは、企業のプロモーションに繋がるような奉仕活動は、CSRの範疇とは認められておらず、企業活動自体(生産物やサービス等)が社会に役立ち、企業が存続することで、その責任が果たされると考えられている。このような考え方は、現在の我が国では、まだ広く浸透していない。しかし氏は、こうした先端的な考え方も理解したうえで、社訓を変更し、理念の策定に望んだということである。このような考え方も、常に学ぶ姿勢を持ち、且つ積極的に取り入れようとする、氏の姿勢の現れであると考えられる。
加えて経営理念の策定にあたり、従業員全員と面談を行い、その浸透に努める努力を行ったことも語られている。実はこうした面談などは、先端企業や大企業でも積極的に行われているが、比較的容易なはずである中小零細企業では、実例が少ない。これは理念経営やミッション経営という考え方が、正しく理解されていないことが原因であると考えられる。
さらに九鬼産業では、ISO22000やFSSCといった基準の取得、ハラールへの対応など、品質向上と、消費者への対応に力を注いでおり、経営理念に基づく、全社的な姿勢を伺い知ることができた。
さらに社員教育の一環として、新入社員が「ごま」の栽培に携わっていることが語られた。
男性新入社員が(部分的に女性社員も参加)、学歴、配属先に関わらず、一定期間の共同生活を送りながらごまを育てるという活動で、新入社員が、自社製品の原料を知るというものである。もちろん農業経験がある者が携わるわけではない。農業を全く知らない社員にとっては、文字通り手探りの作業であろう。そのため、必ずしも収穫が望めるとは限らない。しかしそうした苦労の中で、チームワークを学び、多くの成功体験、失敗体験を積んでいくという貴重な経験を得ることできる。この取り組みは、氏や九鬼産業の社是が掲げている「和」という考え方を、身を持って学ぶ、重要な活動である。
これらの取り組みをはじめとする、企業経営に取り組んできた氏が、今後どのようなことに取り組もうとしているかについて語られた。
氏は、特に人の「感性」を大切にしたいという思いから、コーチングを学び、また、思いを形にする大切さを伝えたいと考えから、EQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)やNVC(Nonviolent Communication:非暴力コミュニケーション)など、様々な分野に取り組んでいるという。
こうした幅広い視点の根底にあるのは、氏の信念ともいえる考え方が基盤になっているように見受けられた。
その信念として、第1に「素直さ、謙虚さ」、第2に「自ら一歩前へ出る勇気」、第3に「柔軟に対応できるしなやかさ」を挙げている。九鬼産業の経営理念にも通じる、これらの考え方により、心身共に豊かな人の集まりを目指したいという思いが述べられた。
最後に経営者としてだけでなく、個人としても大切にしている「3つの視点」について考えを伺った。これは氏の信念、考え方を文字通り体言しているといえる。
インタビュー全体を通じて語られた実績と考え方は、氏自身の、謙虚さと深い見識という、人格に裏付けされたものであることを表したものであった。

株式会社CSV PARTNERS 佐伯陽介

 

[九鬼紋七]
九鬼家十一代目当主
九鬼産業株式会社 代表取締役会長
四日市商工会議所 副会頭

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